2025.01.01 No.294「上田とともに歩んだ半世紀、巳年を迎えて」
上田に生まれ育ってから半世紀以上が過ぎました。この間、一度もこの地を離れることなく、日々を送ってきました。幼少期に遊んだ場所、両親が初めて店舗を構えた場所、そして今は空き家となった実家も、すべて現在の住まいから半径100mほどの範囲に集まっています。自宅の窓からこれらの場所を眺めると、心に残る思い出の場面が今でも鮮やかに蘇ります。狭い路地で野球を楽しんだ日々、柿の木から落ちて怪我をした痛い記憶、街灯が少なく暗闇の中を全速力で駆け抜けたお使いの道──これらすべてが、私の心を温め、今の私を形作っている大切な記憶です。
父から会社を引き継いだ際、最初にイベントを開催したのは、現在住んでいるマンションの敷地でした。当時は月極駐車場で、そこにテントを張り、小規模ながらアットホームなイベントを開きました。社員もまだおらず、チラシの作成から会場設営、おもてなしの準備まですべて自力で行ったことを覚えています。イベントの前日から当日の朝まで一睡もせず準備に励み、何とか開催にこぎつけた達成感は忘れられません。朝5時にシャワーを浴びに自宅に戻ると、母がおにぎりを作って待っていてくれました。その優しさに思わず胸が熱くなったのを今でも覚えています。その時母に「自分の顔を鏡で見てごらん」と言われて恐る恐る見てみると、目の下に大きなクマができていて、まるでパンダのようでした。それでも、その苦労を乗り越えた経験は、その後の人生で大きな自信となり、私の原動力となっています。
上田に生まれて半世紀が経ちますが、実はこの地を離れるチャンスが何度かありました。しかし、そのたびにそれを活かしきれず、結果的に故郷にとどまる道を選びました。今となっては、若い頃にもっと厳しい環境で自分を試してみたかったという後悔もありますが、故郷の上田に根付き、この地で歩んできた半世紀を誇りに思っています。
令和7年の今年は「巳年」です。巳(み・へび)は、古くから神の使いとされ、脱皮を繰り返すことから「再生」や「変化」の象徴とされています。そのため、乙巳(きのとみ)の年は「柔軟に発展し、再生を遂げる」年と考えられています。今年、創業53年を迎える弊社もこの象徴にならい、「変化」を恐れず柔軟に対応しながら、新たな成長を目指していきます。
これからも社員一同、力を合わせて努力を続けてまいります。本年も変わらぬご愛顧を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。