2025.06.01 No.299「正月ビンタ」
SUNらいふの人気コーナーとして長年紙面を飾っている「知ってビックリ!!信州弁」は、今月号で第123回を迎えました。創刊当初からの人気コーナーですが、連載開始当時は「知ってビックリ!!上田弁」としてスタートしました。
長年にわたり連載をしてきたことで、上田弁は網羅されたため、その後は信州全域の方言をご紹介する形で、「知ってビックリ!!信州弁」としてリスタートしたのです。
各地には今も方言が根強く残っており、その独特の表現や言い回しには、どこか懐かしさや親しみを感じます。年配の方とお話をする際には方言がよく使われ、私自身もいつの間にか、それにつられて方言で話してしまうことがあります。
また、日常会話の中で何気なく使っている言葉が、実は方言だったと気づかされて驚くこともしばしばです。
今から30年前、都内から友人が上田に遊びに来たときのこと。朝の気温はマイナス7℃という凍てつく寒さでした。上田駅の改札口で迎えた友人に、歩きながら「都内と比べると、さぶいでしょ?」と声をかけると、「えっ? さぶい? もしかして“さむい”ってこと?」と聞き返されたことがありました。
若い頃は県外の友人に方言をからかわれるのが嫌で、それ以降「さぶい」という言葉は私の言葉の引き出しから削除しましたが、今でもふとした拍子に「さぶい」が口をついて出ることがあります。
ある日、寄り道をして帰宅した日のこと。「ただいまー」と元気よく帰宅すると、妻が私の顔を見るなり笑いながら、「なに? 正月ビンタなの!!」と言いました。
その言葉の意味がわからず戸惑いましたが、「正月ビンタ」という表現は、なんとなく九州の方言ではないかという予感がありました。けれど、いくら考えても意味が見当つかず、妻に聞いてみたところ、鹿児島地方の方言で「正月らしく整った髪型」という意味だと教えてくれました。
九州の人たちは、面白い比喩を方言に取り入れるものだと感心しました。
上田弁にも「ずくなし」「とびっくら」「しょうしい」など、味わい深い方言がたくさんあります。これからも夫婦で、お互いの育った地域の方言を交えながら、楽しく会話をしていきたいと思います。
